乳がんにかかる方は年々増えてきて、今では身近な病気になり、他人事ではなくなってきました。
書道家の杉浦先生は、若い頃に乳がんを発症しました。今ではすっかり完治して日々ご活躍されています。1人でも多くの方が不幸にならないようにと、今回ご自身が経験された体験をお話いただきました。
書道、文筆、そして大学での臨時講師と、今でもそうですが毎日忙しい日々を過ごしていました。会社勤めではない自由業でしたので、健康診断はほとんど受けたことがなかったんです。
ある日、ブラジャーをつける際に胸を触ると、ごりごりとした感触がありました。同時に冷凍庫をあけた時に足元から冷気を浴びるような感覚があり、何かあるなと感じましたが、それまでは全く痛みなどもなく意識していませんでした。
なんとなく友人に話したら、たまたまそのご主人が春日クリニックの関係の方で、すぐに予約をいれていただき、精密検査を受けました。対応してくれた先生は若い女医さんで、とても丁寧に一所懸命検査をしてくれた記憶があります。
春日クリニックでの精密検査の結果は乳がんの疑いがあるということで、大学病院を受診するよう紹介状を出していただき、専門病院で手術を受けることになりました。
がんはステージ3、悪性度は4で、3cmほどの大きさの腫瘍でした。実は私の家系は、いわゆるがん家系で、私の前には叔父までがんが発症。いとこまでおりてきて、そろそろ順番がくるかなと思っていた時だったのです。また、私には姉がいるのですが、ある日、姉も「胸のところに何かある気がする」と言うのです。その姉も乳がんでした。半年しないうちに姉妹で手術ですよ。「杉浦シスターズ」で病院でも有名になってしまいました。
苦しかったのは生活が制限されることです。ホルモンの薬を使っていたのですが、今日はがっつり食べたいと思っていても、突然ざるそばしか受け付けなくなってしまったり、生理もなくなるなど身体への影響がありました。お酒が好きだったのですが飲めません。でも一番苦しかったのは精神面で、がんよりもそちらのほうが長くつきあうことになり、メンタルケアは本当に大切だと思いました。
退院してから6日後、ふと、筆を持ってみたくなりました。恐る恐る握ってみますと、線をまっすぐに引けない。持ち方も変わってしまいました。書道家が筆を持てなくなってしまったらどうしようもありません。そんな時、執筆活動をしていた時の周りの友人が「いつでも戻ってこい」と声をかけてくれました。もし書道が難しくても戻る場所がある。周りの方々の協力のおかげで、辛かったリハビリもこなすことができました。今では旅先でも普通に大風呂に入っていますし、仕事面でも以前の自分を超えることができ、全く穴をあけずに忙しく毎日を過ごす中、日展にも入選することができました。
私の体験からでも、ある程度の年齢になれば、乳がんの定期検診は毎年受ける必要があると思います。私は独身ですが、パートナーがいる方はチェックしてもらったら良いのではないでしょうか。また今振り返ると、あの時すぐに春日クリニックを紹介してもらい検査を受けたことで、今の私の命があるのだなと思いますし、当時担当していただいた女医さんに心から感謝しています。がんは早期発見・早期決着が大事です。今では初期の段階ならエクボ程度で治るようですし、成形技術も良くなってきているようです。患った人の中には、病気が原因で自信がなくなって離婚した人もいると聞きます。そういった不幸なことがこれ以上ないように、1人でも多くの人が私の体験を身近な問題として、心にとめてくればと思います。